文中説明や理解に誤りがあるかもしれませんが、ご容赦ください。
衛星トラッキングは、機材やアプリ等に損傷を与えるかもしれません。自己責任です。
1.序
「はあはあ。」
「はあはあ。 ずびずび。(鼻水をすする音)」
住宅街の路上、午前4時。白いLED街灯に照らされた黒い人影。分厚いパーカー姿。寒がりのようだ。
人影は、硬いひらべったい機械とカオス状態の電線群が入った黒いリュックを背負い、前には何やら大きめの三脚と装置一式を抱えている。架台のごとく過積載である。
肩と腕の痛みに力尽きるようで、数メートル進んでは行軍を休止する、永遠のような様が見える。
パンダ模様の小型の架台には、白い筒や赤い缶がついているようだ。
パトカーは来ないのか?
そういえば、ここ、茨城県南部では、いくつかの自治体に対し本日3月11日午後2時過ぎ(震災発生時刻)に庁舎や駅を爆破すると予告があったそうだ。なんてこったい。
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たどり着いた公園で、人影は三脚架台一式をそっと着地させた。
人影は、更にもう一往復して、500ワットアワーのリチウムイオン電源をえっちらおっちら運んだ。
旧いノートパソコン、レンズヒータ、冷却カメラ、その他機材すべて動かすとこれでも5時間くらいしか持たないのだ。
機材を広げると、水準器を照らしながら、三脚の長さを微調整している。
やがて、モーターの駆動音がする。
「ツースター・アラインメント」とかつぶやきながら忙しい。
PC画面とスマホの灯りが顔を照らした。少しは人生に苦労した?かのような、まぬけな顔が見える。
自分では初老の紳士と思っているらしいが、妻によればとんだ誤認識であるらしい。
2.「ズズッ」「ああっ。」「ガシャ。」「うわあん!」( ゚Д゚)
三脚の伸縮部の締め方が甘かったのだ。一式あえなく地面に横たわり、なにやら赤い缶の一式がアルカスイス板もろとも外れ、ころがっている。
(教訓:締めなどの基本動作はしっかり。後悔先に立たずです。)
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男は、なにやら殺気立った手際で土煙を挙げながら飛び回り、再組立てや各種光軸・架台の水平合わせ、動作確認を行っている。
ほどけた靴ひもが引っかかったようで、転びそうになっているのが自業自得である。早朝出勤の方々、ごめんなさいね。
ISS(国際宇宙ステーション)の飛来時刻があと30分。一刻も猶予がならない。
(野口宇宙飛行士も、ISSで必死で太陽電池支持部をネジ留めしてたんだ。がんばれ、爺さん。)
ワン・スター・アライメントにとどめる。光軸合わせも不十分、水平出しも地面の芝の弾性で落ち着いていないが、次の作業に移ろう。
スマホにノートPCをテザリングし、ネットに繋いで最新の軌道要素をダウンロードしようとする。繋がらない。なぜだ?
僕って焦ってますか?
こうなったらわり切りだ。オフラインで決行だ。昨日夕刻にアプリのPreviSatでダウンロードした軌道情報TLEファイルが、十分新しいものかどうかわからないが、それを使うまでだ。CSVファイルを生成してセットする。
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3.深呼吸をし、ポケットの龍角散喉飴をひと粒口にする。
アプリのSatellite TrackerでISSをトラックするテストを数分間行った。
フライ・パスはほとんど垂直に登ってくるようだ。
スマホに表示されたASIAIRproのVIDEO画面で、ゲインや露光時間を調節する。10flopsくらいになるように調整。
よし、本番スタート。自動でのTracking開始まであと5分。
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4.ほどなくして屋根から橙色のISSが現れる。AM5:19ころ。
CMOSカメラの画面の中心からはずれている。眼視の視野にも当然入っていない。
あまりよい方法ではないが、架台を少し手動で調整し眼視視野に入れる。
(小生のAZ-GTiは、高剛性かつ弱くクランプかけた状態で手動調整しやすいように、シムリング交換改造・摺動摩擦調整してあります。)

5.順調にTRACKING。速い!
動画はこれ。Yutube
6.眼視印象
CMOSカメラでの広角(といっても7×4度くらい)撮影と同時に、高解像きわまるFC65で眼視。アプローチしてくる印象の絵です。
とても明るくまぶしい。視野導入を考慮し倍率は30倍にとどめたため、細部は見えませんが、視野内にほぼ静止。息をのむ感覚でした。恒星が視野内を吹っ飛んでいく。
これが秒速8キロなんだ。

7.急速回転中に天頂ISSを見上げた
あっというまに迎え角が大きくなり、AZ-GTiの追尾速度限界。架台が南東へ向けて急速回転開始。
「ぴががーじじゅいーー」と言って数百倍速。
このときまでは、モーターがアプリの急速回転の指示に追従しきれずに脱調しているものと誤解していました。しかし、そうではありませんでした。
ISS再追尾へ向けて正常制御され全力で回っているのでした。
ぐわんばれ、壊れませんように。

8.急速回転している間、じっと天頂のISSを裸眼で見上げていた。
あそこに宇宙飛行士達がいる。世界中の地表に支えている人々がいる。
すばらしいスピードで飛んでいく。
9.さらばじゃ
(このトラッキングシステムは天頂は不得手です。経緯台の相(さが)です。(仰角60度くらいまでのパスが得意だと思います。))
回転後、びたっと、かなりの精度でISSのTrackingが再開されました。
急速に南東に遠ざかり、朝焼けの空に溶け込んでいきました。
FC65で眼視再開しましたが、短時間しか視野に入れられませんでした。近づいてくるときの方が見やすかったです。

10.当日機材風景です。
使用機材アプリ
AZ-GTi(改造)、FC65(眼視約30倍)
PreviSat, Skywatcher SynScan Pro, SkyWatcher Satellite Tracker Application Version 0.18,
ZWOASI533MCpro, AF-S DX Nikkor 35mm F/1.8G絞り開放 ひとこま当たり露光50ミリ秒
ASIARproでVIDEO撮影
ノートPCを架台に有線接続(SkyWatcher USB dongle)
CMOSカメラ→ASIAIRpro→Wifiルータ→iPhoneで画像記録(RYOさんの記事参考に、GL-AR300M-EXT無線ルーター使用)

11.衛星トラッキングについてのメモ
(1)参考になるオーストラリアの方の動画:インストール、操作
New Sky-Watcher software makes Satellite tracking easy - a brief set up
https://youtu.be/E1TbbuHixaA
(2)小生の初めてうまく撮影できた例
動画例:ハッブル宇宙望遠鏡(光度3等級)
(3)アプリPreviSatは衛星の軌道情報(TLEファイル)やいろんな衛星のリスト(txtファイル)をネットからダウンロードし、衛星位置情報の.CSVファイルを生成します。他にも軌道予測、月を掩蔽する予測、軌道状態アニメといったいろんな機能あります。
アプリSatelliteTrackerは.CSVファイルに従ってWindows版SynScanproを操作して架台を制御し衛星をトラッキングします。
画面コピー:室内での模擬ISSトラッキング:デスクトップPC:3月5日

衛星トラッキング:メモ1
PreviSatは、SkyWatcher社のSatelliteTrackerのダウンロードに含まれる特別試験バージョンver.4.4.0.1(画面上は4.1表示)が必要です。衛星位置情報CSVファイルを生成するためです。他のバージョンはこの機能が見当たりません。
ぽんにゃんさんのおっしゃる通り、SatelliteTracker 0.19と新しいWindows用SynScan pro 1.19.0も必要とされています。Synscanpro制御 のために、スマホとWindows間で座標やアラインメント情報を共有・同期するためだと思います。)
SkyWatcherのアプリダウンロードページ
http://skywatcher.com/download/software/synscan-app/
衛星トラッキング:メモ2
インターネット環境必須です。なぜなら、軌道情報(TLEファイル)は、最新が望ましく、また、Hubble望遠鏡は、小生の場合、視界に入る直前にならないとTLEが入手できなかったように思われたからです。
(なお、トラッキングはインターネットに対しオフラインでも可能ですし、自分も緊急性や状況に応じてそうしています。ステーションモード等、機材の繋ぎ方はいろいろあると思います。)
衛星トラッキング:メモ3
txtはvisualが良いです。しかし、他にもstarlink.txtとか面白いのが多々あります。例えば、starlinkの2200から2208なんかは、今、トレイン状態なんじゃないでしょうか。(さらに、また新しく打ち上げられましたね。)
衛星トラッキング:メモ4
PreviSatを開くときにSVSVMLPOST.htmlが見つからない旨のようなエラーメッセージがでますが、無視します。ISSのマニューバー要素?と思いますが、今はこのリンクでは提供されなくなったのではないでしょうか。
衛星トラッキング:メモ5
小生は自分の位置情報を秒まで正確に入れています。
少しの違いでも、見かけの衛星位置は大きく異なります。
(あ、大きく異なるのは衛星が近い(天頂付近)の場合の話です。ISSの場合、自分の座標1分違うと衛星位置15分くらいずれるんじゃないでしょうか。)
(PreviSat で現在地変えたり新設すると落ちます。仕様でしょう。(^^)/)
衛星トラッキング:メモ6
SatelliteTrackerの下の方にTracking Position Offsetの十字ボタンがあります。便利そう。小生は、まだ使えていません。キーボードの矢印と繋がって入るようですが、規則性がつかめません。ゲームコントローラー(ヌンチャク等)で操作できないかな?
(ぽんにゃんさんのおっしゃる通りこれで微調整する設計です。)
小生もやってみましたが、小生の機体は工作失敗のために傷だらけでして、上下動のバックラッシュがちょー特大でして、まだうまくいってません。(^^; )
衛星トラッキング:メモ7
SatelliteTrackerをconnectすると、SynScanproAppは制御をSatelliteTrackerに移してしまうみたいで、人間はSynScanで鏡筒方向微調整することができません。そのためにAdjust Offsetがあるのだと思います。
衛星トラッキング:メモ8
衛星トラッキングはとっても面白いので、小生のような老人ではなく、いろんな方がいろんな利用方法を編み出していってほしいです。アプリも進化して欲しいです。健闘を祈ります。
取り敢えず、以上。
(*^^)v
(了)
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