北アメリカ星雲:180mm望遠
(D型赤道儀ノータッチガイド)

北アメリカ星雲 2018年4月13日、茨城県 プラトー里見にて
高橋D型赤道儀架台 ノータッチガイド 初めて極軸とピントが合った撮影
(星見屋さんのマイクロフォーカサー使用。POLEMASTERで極軸合わせ。)
Ai nikkor ED180mm f2.8をf4に絞る
nikon D7100無改造 iso1000 露出234秒(1枚のみ)
現像アプリ:nikon NX-D フラット、ダークなし
大阪迷人会さんの方々の作品をイメージし、星の色を出そうと努力。
中古D型に遭う:神田界隈
今から三十数年前、就職して4年目くらいに、神田神保町だったと思うが、そこに開店した協栄産業さんにときどき行っていた。協栄産業の当時の店長さんはTさんとおっしゃっていたと思う。コーヒーを頂いたこともあった。
ある日、中古の高橋65ミリ屈赤D型が展示されていた。白鳥のように美しい。良心的かつ剛健な造り。3枚玉セミアポクロマート。幼少からの憧れの機種だった。時代はすでにフローライトだったが、即購入した。ハンドル回す手応えがぬめっとして素晴らしい。職人の丁寧な作業を感じる。
中坊、D型に憧れる
小生の天文歴は、いとこが屈折望遠鏡で木星を見せてくれたのが始まり。幼少の記憶は単純化・拡大される。木星は、大きな白い円盤で、模様は無い。ただ、木星の縁から衛星が出た光景が記憶に残っている。後年いとこに聞くと、ダウエルの5センチくらいのものだったという。
その後、少学5年生の「学研の科学」という本の付録に天体望遠鏡がついた。これを長いこと楽しんだ。中学生くらいまで使っていたように思う。シングルレンズで、レンズ自体は4センチくらいの口径があったが、有効径は1円玉くらいに絞られていた。倍率は20倍。鏡筒は、画用紙に墨で内面黒色塗装して作った。月も木星も火星も土星も見た。ベニヤ板、そこらに転がっていた木の幹、誰かにもらったバイクか何かのボールベアリング、プラモデルの戦車のギア、鉛筆削りの机への固定金具などで経緯台も作った。上下にぎゅるんぎゅるん揺れてすごかった。銀塩フィルムの時代で、写真は1枚も残ってはいないけど、月面撮影も試みた。海らしきものが写った。口径を広げると、かえって分解能が落ちて木星が丸っぽい色付き四辺形に見えたのがなつかしい。
中学くらいから、雑誌でいろいろなメーカーの評価や実績を読むにつけ、高橋のD型が憧れになっていった。しかし、小遣いが貯まるより早く価格が48000円から5万4000円に上昇したりして、残念だった。
その後、雑誌や図書館で写真集を借りて知識は得ていたが、望遠鏡の所有はなかった。高校に天文部はなかったが、文化祭で、同好会が高橋の10センチ反赤や少数の写真を掲示していたことがある。これが高橋の黒塗装だ、斜鏡金具が一本足だ、と感動した。また、展示の一枚だけ、小口径で撮った火星のモノクロ写真で抜きんでてよいものがあった。この撮影をされた方は今では電波天文学の重鎮である。
D型入手後
独身寮の屋上で惑星を見たり、レンタカーで野辺山に行った。ファミスコ60を同架し、アンドロメダ星雲やオリオン座のM42を撮影した。ハレー彗星もトライしたが、当時使用していたサクラカラーのISO1600のネガフィルムを冷蔵庫に保管したのがあだとなったのか、失敗した。当時使用していたカメラは撮影後モーターでの自動巻きとりするタイプ(キャノンT70)だったが、乳剤が乾燥し過ぎていたのか、静電気でフィルム面で放電が起き、彗星に重なって青い稲妻が写ってしまったのだ。他の日に富士山で撮影した時は強風で、D型の強度でも及ばなかった。
当時、伝説の店ATOMさんも神田付近にあり、バイクでJRのガードをくぐって行った。ハレー彗星のころ、今度、富士山にマイクロバスを仕立てて行くけど、よかったらどうですかとお店の方に誘われ、大喜びで同行させていただいた。山麓の駐車場には、マニアやいくつかの展示器が集まった。フローライト屈折やミードのシュミカセがあった。テレビ中継もあって、今もご活躍の三雲アナウンサーがいらしていた。
突然トレーラーに載った大きな反射望遠鏡が到着した。口径80センチくらいの白っぽいフォーク型赤道儀。電動で、細長いコントローラーに押しボタンがたくさんついていた。駆動音は大きい。ミラーを装着するために真上に向けた鏡筒トラスの下で、白いシャツの背中に80センチ鏡とセルを載せ、荷車を持ち上げるジャンバルジャンのように四つん這いになって、持ち上げている若い人がいた。セルのボルト留め位置合わせをしていた。天文ガイドの写真で存じ上げていた方にとても似ていた。すなわち、現在の星の村天文台長その人だったのではないかと思う(未確認です。すみません。台長様には、天文台に昨年初めて訪問しましたが、まだお話し交わしたこともありません。)。そして、望遠鏡は、チロ鏡。
上野の国立科学博物館での観望会にも少しだけ行った。天候不順のときはやらないので、電話で問合わせたら、いきなりアポロ11号月着陸のテレビ等で存じ上げていたM山氏のまろやかなお声だったので、びっくりした。高橋の10センチニュートン反射で土星が色収差なしで良く見えた。
徐々に付属品は増え、たまに飯田橋?にあった誠報社に行くこともあった。
木星や火星の銀塩写真も撮り、神田のガード下の飲み屋のおばさんに見せたら、ばかもん、早く嫁さがせと怒られた。
渋谷からのバスに乗りながら写真のネガを見ていたら、後ろの座席の年配の紳士に、木星ですね、何を使ってるんですかとか聞かれたこともあった。東京すげえ。ぜったい田舎ではこんなことない。
やがて、協栄産業さんの30センチのサイコロ状メタリックブルーのドブソニアンに手を出した。でも、あまりにも重量があり、結果として稼働率が低く、そのうちに手放した。
いつしか、家族ができ、転勤や多忙で、天文からは離れた。D型は丁寧にカビ止めや乾燥材で包み、田舎の物置で冬眠に入った。当時の写真は全く発見できない。でも、転勤した時も、ファミスコ60で幼い息子と金星の日面通過を投影して見た記憶がある。太陽がずれて、黒いプラ部品が少し溶けてしまった。
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回帰
30年以上経った。それでもなお、心に天文は残っていた。
60歳を超え、しばらく経ったある日、物置からD型を取り出した。きれいに拭きあげる。HD4も正常に駆動した。カビは無い。昔のアイピースも出てきた。
ネットで調べて、茨城県北などへ出かけるようになった。
2017年の9月だったと思う。奥日光の戦場ヶ原駐車場に行った。双眼鏡を楽しんだ。駐車場には、奇しくもつくばナンバーの車が3台集まった。少しお話しした。また、スカイウォッチャーの40センチドブソニアンを組み立てているお二人がいらしゃった。皆でかわるがわる覗かせてもらう。球状星団の個々の星々を見たのは初めてだった。惑星状星雲や網状星雲やいろいろのぞかせていただいた。skysafariによる自動導入を初めて見た。
今年になって、また、奥日光でこのドブソニアンの方に遭遇する機会があり、10メートルほどかなたから、聞いたことのある学校名等の会話が聞こえ、ひょんなことから、高校が同じことが分かった。まったく不思議な巡り会いだ。
文字が多くてすみません。
休憩:ウィルタネン彗星、ふたご座流星群

2018年12月14日、プラトー里見にて(人、いっぱい!)
高橋D型赤道儀架台
AF-S NIKKOR 20mm f/1.8G ED 開放
流星が写ったコマを比較明合成
D型の苦労
これまで、D型での撮影では主に次の4点が大変だった。
- 極軸が合わない(極望がついていない)。
- 小生のは非システム化仕様のD型であるため、望遠レンズを付けたカメラの積載が難しい。
- 望遠レンズのピント調整がうまくいかない
- 撮影対象が写野になかなか入らない。特に、空の明るめな自宅では無理。
解決策
やったことは、
1.ポールマスターを導入。また、前回も触れたように、極軸の水平微動が無いため、星見屋さんから購入したマイクロフォーカサーを加工して水平微動とした。後日、極軸調整は、sharpcapで行うようになった。この方が簡単。
2.小生のD型赤道儀は非システム化モデルである。D型用の鏡筒バンドや雲台、追加ウェイトなどを入手。いろいろ試したが、鏡筒バンドと雲台で鏡筒に固定しようとしても、望遠レンズの重さで、カメラが徐々に回転してしまい、鏡筒に滑り止めを貼るなど工夫しないと強く固定できない。結局、鏡筒なしの状態でカメラをウェイトシャフト用の高橋純正の雲台に載せることとした。モーターが強いので、バランスがくずれていても何とかなったが、モーメントアームも長く、限界を感じた。
3.星見屋さんの1.で用いたのと同じマイクロフォーカサーをプチ改造した。小生の使用している望遠レンズと大体同じ口径だったので、利用できた。

リングを突き通してレンズ側に触れている120度間隔の金属ネジ(写真で、各リングに2本、合計4本見えてます)は緩くしめてあり、ずれない程度の気休めである。
本当の固定は、微動ネジや四角の金属棒と対角線上にある1本だけで、対角の微動ネジ付近に圧力をかけ、摩擦力で線接触的に1か所固定にしている。
2本のリングともレンズへの固定は同じ1本ネジ摩擦力固定方法。なお、強く締めると、レンズの鏡筒が変形して回転が渋くなるので、締め方はけっこう繊細である。
バックラッシュを防ぐため、ホームセンターで購入したスプリングでタンジェントスクリューを押している。
4.ポールマスターを電子ファインダーとして使用した。ポールマスターは、sharp capで認識されたので助かった。でも、自分の場合、なぜかwindows 10ではうまくいくが、windows7では、だめ。
変化しよう
更に、ネット上を探索し、限られた時間と体力でいろいろな天体を見る、撮る、天体の情報を観望中にもたやすく得る、などができそうだったので、変化することにした。D型から得たノウハウや土地勘で、離陸した。
具体的には、電子化を検討しました。当初は、SkywatcherのEQ5など・小型頑丈な三脚・CMOSカメラ等いくつかの電子機器の組み合わせ、を有力に考えていました。他方、このころ、Samさんの聖典「ほしぞLoveログ」に出会っており、AZ-GTiをお店で実際に見て、結局AZ-GTi導入、試行錯誤に至りました。
曲がりなりにもこれまで実現できたのは、
- sky safari,caltes du cielなどで自動導入できるようにする。
- PHD2オートガイドできるようにする。(まだ精度が低いです。)
- 極軸合わせを簡単にする。(sharpcap)
- plate solvingできるようにする。(経緯台モードでも、赤道儀モードでも動作した。sharpcapとastro trotilla)
- AZ-GTi、スティックPC、iPadをモバイルルータで繋ぎ、リモートデスクトップで操作する。
これからも、この分野の数多のクリエイティブな方々の片隅で、つつましくも自分なりに美しいと思える写真とか、電子観望とか、工夫とか、不断に変化を続けていきたいと思います。
(了)
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