再び長文注意:非推奨暴挙改造:レンズレス・シュミット化NEWTONY君でASI533MCPを使う
0.多種多様なアマチュア天文界の方々の日夜のご活躍をお喜び申し上げます。
さて、本記事は、こういう改造をしたらこうなりました、という情報提供にすぎません。
この改造を推奨するものではありません。プリングルズ鏡筒の外見とは異なり、全体改造も調整も自分的には難しかったです。
でも面白かった。
改造はあくまでも自己責任です。
最近のツイートを元に、かなり追加してまとめました。
1.ACUTER OPTICS NEWTONY をレンズレスシュミット化する
可愛らしい口径50mm F4のニュートン反射です。素敵ですが、球面収差、コマ収差が目立ちます。
そこで、2019年7月に、小生は、まず、レンズレス・シュミット化改造を致しました。
レンズレスシュミット化でコマ収差が消せます。しかし、シュミット補正版が無いので球面収差を補正することはできません。なので球面収差は残りますが、口径を絞れば軽減されます。
当時、SVbonyさんのSV305を使いたかったのです。接眼部回りを短縮改造、軽量紙鏡筒で延長しました。
使いこなしは、結構繊細で難しかったです。
レンズレス・シュミットについきましては、2012年に、先見の明と行動の方、シベット様が記事になさっています。多謝。
レンズレス・シュミット・ニュートンを作る
小生の当時の記事もご参考。シベット様には、光学計算のコメントもしていただきました。
徒然臭(その2):SIGHTRON NEWTONY でレンズレス・シュミット・ニュートン、SV305も装着
徒然臭(その4:終わり):レンズレス・シュミット・ニュートニ―くん:ノーフィルターSV305直焦点試写
2.ASI533MCPを使いたいんだよう
小生の旗艦カメラASI533MCPの画面サイズは11×11mm。装着すれば3.6×3.6度くらいでかなり広角。シュミットカメラは、像面が球面に湾曲します。脳内雰囲気的には、おそらくセンサー面の直径10mm円以内ならピントズレは中央部に比べて0.13mm以内にとどまりそう。それに、SV305(画面サイズ5.6×3.2mm)の感触から、残存球面収差のボケもありますし、小生のようなゆるーい鑑賞用であれば、フィールドフラットナーを付けなくても許容範囲だろう、と判断しました。光学計算アプリ使えないですけど。
3.主鏡セル改造
元のままのNEWTONYでは、CMOSカメラのセンサー面よりもかなり斜鏡側に結像するため、ピントが合いません。SV305の場合には接眼部を削り短縮することでギリギリ対処できましたが、今度は更に大きく焦点位置を引き出さないとだめです。ASI533MCPでピントが合うように、主鏡を更に12mm程度(以前の短縮改造も含めれば、トータル18mmくらいになるか?)せり出す必要があったように思います。斜鏡も大きくすべきかもしれませんが、絞りで光束径を9ミリ小さくすることもあり、画面中央は影響がないこと、周辺減光は元々大きいので、フラット補正すれば大勢に影響はないだろう、と省略しました。
4.絞りフード
ツイッターでマリーチさんからプリングルズを教えていただき、紙筒にしています。長さは焦点距離にちょっと欠ける180mmくらいです。以前作成のものをそのまま使用。絞り口径41mmです。調整を容易にするため、やや偏心させてあります。周辺減光を無くすためには、30mmくらいまで絞らないといけないと思うのですが、そんなことをすれば暗すぎますし、斜鏡の遮蔽で中央部が一段と暗くなることが予想され、非現実的です。結果、動物的バランス感とハサミの切り抜き誤差で、絞り口径は41mmになっています。
5.主鏡かさ上げ・光軸調整機構の工作
主鏡セルは、細いマイナスドライバーでこじって無理矢理鏡筒から外しました。
ハンドドリルで頑張りました。
押しねじ。紙やすりで頭を丸く削りました。
なお、主鏡は、つまようじを数本隙間から注意深く徐々に押し込んで、ノミで花崗岩を割るようにして、剥がしました。
5ミリ厚スポンジをバネ替わりにしました。基部ねじは接着剤とともにしっかり打ち込みました。
円盤状アルミは、ハサミで切りました。押しねじ用に凹みを設けました。
ここに主鏡を張り付けます。
DIY店で購入した木材の丸板は、黒いプラスチックのセルの3か所のツメに合うように彫刻刀で削りました。
主鏡固定に両面テープ
きれいに貼り付けできました。
これで主鏡光軸修正はバッチリです。
7.カメラ接続アダプタ(T2-31.7mm)短縮
光束のロスを減らすため、短縮します。
短縮後と比較
アルミなので、ヤスリでゴリゴリ8mmくらい短くしたと思います。フィルタ用ネジ切り部が十分残る長さに留めました。
サイトロンQBPフィルターです。多層膜ですので、ミラーみたいです。
8.鏡筒固定:針金と輪ゴムで粗雑に現物合わせしながら作りました。
針金をカメラ固定リング(以前にエレクトリック・シープさんで購入)に挟んで、上下調節できます。
アリガタにも針金固定しました。
9.私は愚かな光軸合わせの泥沼住人
やわな構造なので、あやしくアバウトに光軸修正。それでも小生にはとっても難しいです。
(0)(遠方風景を写してピントが合っている状態からスタート)
主鏡は6角レンチ、斜鏡は首の長いプラスドライバで注意深く行いました。
カメラに写るリアル星で合わせようとしたこともありますが、合いませんでした。
一度カメラを外すと、戻すときに大きくずれるため、たとえレーザー等を用いた器具があっても、使えないと思いました(持っていませんけど)。
結局、
(1)まず主鏡光軸修正を行う。数メートル離れたところからフード先端部の絞り蓋を付けたり外したりしつつ、鏡筒を覗き込んで、スパイダーと斜鏡の影が主鏡円のほぼ中央に来るように調整する。
(2)首長ドライバーを用いて斜鏡を調節する。
スパイダー、斜鏡の影、鏡のようなCMOSカメラフィルタ、の3つが対称性良く主鏡円のほぼ中央に来るように注意深く調整。絞り蓋を外して眼を鏡筒に近づけて少し振れつつ見ると、CMOSカメラにつけたフィルタが鏡のように明るく見えるので、それが欠けずに主鏡、スパイダー、斜鏡と同心になるように、首長ドライバーで超絶微妙に調整。
(3)絞り蓋をはめた状態で数メートル離れて覗き込み、様子を見ます。斜鏡影が概ね同心円になっているはずです(斜鏡が光路設計上エプシロンのように僅かに偏芯設置されているように見えるんですが、無視しました。)。だめなら、適宜(1)と(2)を行う。
(4)星を撮影(連続previwや動画を使用)し、ピントを再修正し、カメラと光軸の総体的傾きが感じられた場合は針金の挟まれた部分長を変えたり腕力で微妙に針金を曲げて調整。ピントがずれたら、ピントリングを回して合わせる。泥沼に陥ったら、潔く(1)からやり直す。
(5)かなりうまく合ったと思ったら、以後、斜鏡調節ねじは繊細過ぎるので極力いじらない。フード先端部の絞り蓋(わざと偏心させてある)を回転し、周辺減光がなるべく偏らない角位置を探索し、印をつける。わずかな主鏡光軸修正で偏りを調整することも可能。いざとなれば、ピントも4つの主鏡光軸修正ねじを使って2ミリ程度変更可能ですが、全てやり直しになります。
光軸調整後の風景。黒い紙の板は、フラット撮影時の反射減少のためのもの。
主鏡光軸調節ねじ。真ん中は押し、周囲の3つは引きねじ。調子よいです。
斜鏡調節用の首長ドライバー
5.フラット撮影と気づきの点
(1)主鏡が小さく、フードの絞り口径が大きすぎるため、理想的なシュミットカメラとは異なります。
このため、大きな周辺減光と全面に複雑なかぶりがあります。
従って、フラット補正が不可欠です。
ASIAIRのLiveStackは、Light撮影時に、前もって準備したダーク、フラット、バイアス画像を撮影と同時に適用し、補正された画像を蓄積できます。このために、ダーク、フラット、バイアス撮影をLight撮影前に行いました。便利です。
フラット撮影方法お試し結果
×iPadで真っ白な画像を使って、絞りフードに接近させて撮影
△iPadで真っ白な画像を使って、絞りフードから離して撮影
〇リアル夕刻の薄明るい空で撮影
なぜ、夕空フラットが最も良かったのでしょう?
iPadとの主要な違いは、ガラス面の反射だと思います。
おそらく、iPad画面のガラスから出発した光が、主鏡・斜鏡・フィルター・斜鏡・主鏡・iPadガラス面・主鏡・斜鏡・・・・・・・と往復ループして、フラットの乱れを生じていると推測します。
なので、理想的には、絞りフード開口部から外に大きな空間のある白い球状の風船のようなフラットジェネレータを造形できると良いのかもしれません。
(2)フラット無し撮影の例
(3)iPad miniでフラット撮影を試す。
最高輝度で超短時間露光で行いました。
以前、パソコンモニターで暗くしてフラットとを撮ろうとして、PW制御のLED明滅のためか、縞模様が出たり不安定だったからです。
(ガラス面に照明が写り込んでいます。前述のとおり、ガラス面とカメラ部フィルタ面で光が往復反射するのが、今回フラットを乱す大きな原因だったと思います。)
(4)うまく行かなかった例。
iPad miniを極力近づけてのフラット撮影。(イメージ。実際は暗闇で行います。)
その結果です。ダメでした。×
(5)フードから離して撮影(イメージ。実際は暗闇で行います。)
その結果。火星です。まあまあです。△
しかし、強い画像処理を行うと、不均一が現れます。
(6)どうにも合わないので、やけくそで、夕刻の空でフラット撮ったら、実は最も良かったです。
(画面はイメージ。実際は薄暗くなった夕方の快晴の空でフラット撮ります。)
偶然の夕空フラットの結果です。なかなかいい。
ダーク、フラット、バイアス補正有りライブスタック180s*10*6set
一種の手動6枚ディザリング
周辺部は、大きく不整な口径食があるうえ、球面になった像面、球面収差、カメラセンサー面が光軸に対し傾いたりずれたりしている ため、ボケや乱れがあります。
ちょっと黒を引き締めました。
色を反転するのも新鮮です。
同じ晩の北アメリカ星雲。かなり広角ながら、星に色収差が見られないのが新鮮です。
(厳密には、フィルタ、カメラのオプティカルウィンドウ、素子のカバーガラス等の効果はあります。)
これも色反転してみました。水素が青くなります。
(7)撮影機材の雄姿です。
NEWTONY君でいろいろ試せました。網状星雲もこれまでで最高に写せて、嬉し。
ハードル高いですけど、光学設計とか、フラットナーとか、もっと大きな主鏡とか、3Dプリンタとか、実力も無いのに妄想だけが膨らみます。世の中、やってみたいことが多すぎます。アマ天がこんなに多様に楽しめる時代がこれまでにあったでしょうか。
(了)
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